前提として,あなたが資産運用をしてどうなりたいのかが重要になってきます。
① 今の生活をより豊かにしたい(知識・不労所得など)
② 老後の生活をより豊かにしたい(老後資産の安定など)
①は短期・中期の目的であり,②は長期の目的です。もし,①が目的とするのであれば,iDeCoを始めない方が良い場合があります。②が目的の人はiDeCoを始めると良いでしょう。では,なぜ①の人はiDeCoを始めない方が良いのでしょうか。
iDeCoのメリット
① 積み立て投資額が全額控除対象になる
② 老後2000万円問題に対応できる資金を今から作れる
③ 受け取り時に非課税で積み立てた額を受け取れる ※場合によっては課税対象にもなる
iDeCoのデメリット
① 現在の資産形成上不利になることがある
② 受け取る際に課税対象になる場合がある
③ 事務的な手続きが煩わしい
iDeCoは資産運用上不利
一部の資産が動かせないのは都合が悪い
iDeCoの前提条件として,60歳までは引き出すことができないということがあります。従って,今毎月入金している金額は将来のために今使えなくしている状況なのです。例えば,投資信託などで運用している資産は,突然多くの現金が必要となったとき,いざとなれば売却することで現金を手に入れることができます。しかし,iDeCoでの積み立ては違います。ほとんどの場合引き出すことは困難なのです。引き出す条件は,非常に厳しく,多くの人はそれらの条件に当てはまらないと思います。
<iDeCoの途中解約条件>
・iDeCo加入者が死亡した場合
・iDeCo加入者が障害を負った場合
・iDeCo加入者が脱退一時金を受け取る場合(下の画像参照)
資産形成をしていく場合,ある程度自由度がないと最適な資産管理ができなくなりますから,その点iDeCoは不都合なのです。また,FIRE や サイドFIRE などを目指している人からすると,今運用に回せる現金をわざわざ老後まで使えない状態にするのは非効率的に見えます。
金額の変更などの手続きが時間がかかる&面倒
一部の資産が動かせなくなるからということで,金額の変更をしようとする場合もでてくると思います。そして iDeCo は積立額の変更方法が煩わしいのです。投資信託などであれば,各証券会社のサイト上でワンクリックで即変更が可能ですが,iDeCoの場合,『加入者掛金変更届』というものを提出する必要があります。また,この書類に関しては,郵送のみとなっているので,この変更届の紙を 印刷 → 記入 → ポスト投函 しなければならなく,手間がかかります。また,手続きに時間がかかる場合があるので,思うようなスピード感で変更されないこともあります。
iDeCoでの積立額は課税対象になる場合もある
『iDeCo = 非課税』という認識では引き出す際に痛い思いをする可能性があります。それは,iDeCoで積み立てた金額は,あくまで給付という形であり,なぜ課税対象にならないように見えるかというと,退職所得控除があるからです。退職所得控除は勤続年数によって変化する控除額です。要は,「長い間働いてくれたから,その分退職金の受け取るときに優遇しますよ!」というものです。教員の場合,退職金の平均は2000万円前後(令和4年現在)と言われています。22歳から働き始めたとして,60歳まで働くと,退職控除額は2060万円となり,受け取る退職金は全て非課税となります。
<退職所得の計算方法>
(収入金額-退職所得控除額)×2分の1×税率
・勤続年数20年以下:40万円×勤続年数(1年未満切り上げ。以下同様)
・勤続年数20年超:(勤続年数-20年)×70万円+800万
※「収入金額」=「老齢給付金」,「勤続年数」=「加入期間」
しかし,この額を超えてしまうと,その分所得税が発生します。つまり,勤続38年,退職金2000万円,iDeCoで積み立てた額が1000万円ある場合,退職所得は470万円となり,470万円に対して,所得税と住民税がかかるので,約100万円ほどの税金を納める必要が出てきます。
受け取り方を工夫すると,納めるべき税額を減らすことはできます。その人の所得によって最適解が異なりますので,受け取る際には実際に計算してみるとよいですね。
教員の退職金年々減っていってるからなぁ…満額iDeCoもありかも…と考えちゃうね。
まとめ 〜iDeCoをやる目的はなにか〜
あなたにとって,iDeCoをやる目的はなにかを明確に持つことが大切です。節税のみであればわたしはおススメしません。しかし,日々少しずつ積み立てていき老後の安心をなんとか手に入れたいということも含まれるのであれば,iDeCoをやる価値はあると思います。公的な年金も受け取れるか分かりませんから…
iDeCoは積み立てる期間が30年前後と超長期戦です。これからのあなたのライフプランに合った資産形成をしていきましょう。
コメント