不都合な部活動の真実

効率化

部活動が時間外勤務を増加させている原因であるということは言うまでもありません。

部活動は好きな人はどんどんやれば良いと思うのです。
それが生徒のためになっているのであれば、授業などの教育課程外にまで教育の場を広げ、自らの意思で行おうとするのは止めるべきではありませんから。

問題は、そうでない ”部活動をしたくない人にやらせている現実” があることが大きな問題点なのです。

部活動の断り方はこちら

部活動の実態

実態を4つの観点に分けて紹介していきます。
主に拘束時間のこと、部活動手当のことに関してです。

あるのすけ
あるのすけ

本当にきついです……


部活動運営で大変なことは、

  1. 強制的に顧問をやらされていること(命令はされていない体になっている)
  2. 部活の時間のため事務作業や教材研究を行う時間が後にずれ込み、結果として勤務時間外の労働が長くなること
  3. 勤務時間外に生徒が学校に残っている状況が生まれること
  4. 大会などの引率の根本的解決がなされていないこと
  5. 事故起こった場合、顧問の責任と押し付けられること

平日・休日の部活動

スポーツ庁の部活動ガイドライン(運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン)によると、

それを受け、各都道府県教育委員会は独自のガイドラインを策定し、各学校へ通知を出しています。

どのガイドラインも

  • 週あたり2日の休養日(平日1日&休日1日)
  • 長期休暇はオフシーズンを設けること
  • 活動時間は1日平日2時間まで、休日3時間まで

とされており、正直このガイドラインを守ったところで現状の部活動の問題点に大きな変化はありません
なぜなら部活動の根本的問題に対して解決しようとしているものではないからです。

本来終わりのSHR終了後、教員は会議や事務作業、環境整備などを行う時間になります。しかし、部活動があると生徒が在校しているので生徒対応が優先されます。従って、やるべき業務があったとしてもやらなくてもよい部活動を優先せざるを得ない状況となっています。さらに、平日2時間まではできるので、15時ごろにSHRが終了しても17時までは部活ができてしまいます。教員の勤務時間はおよそ17時までですから、部活を行うと必然的に勤務時間が守れないのです。

教員の働き方改革で月の時間外勤務時間を45時間以内にしようとの動きがありますが、そもそも守れるような体制になっていないのが現状です。さらに45時間までは時間外勤務をしても仕方ないと思っている教員もいます。時間外勤務時間が一桁の教員の方はどれほどいるのでしょうか。

平日には強制的に早く帰らせる日が設定されている市町村もあり、平日にできなかった業務に関して、休日にサービス勤務のようなことをしてなんとか間に合わせているという教員の方も多いです。

中体連・高体連などの大会時

中体連等の大会で従事しなくてはならない時間は大変長くなっています。
まず、大会で従事したとしても部活動手当は1日3時間(部活動手当3000円程度)しか出ません
そして、大会で従事して良い時間は部活動ガイドラインで規定されている時間には含まれないのです。
つまり、大会の引率は完全に自主的な活動(3時間以上の活動)であると判断されてしまうのです。

たとえば、ある部活の大会で引率した際の1日の流れはこのような感じでした。
2つの部活動の例を挙げます。どちらも活動日は土日です。

どちらも部活動従事時間は14時間以上となっているにもかかわらず、部活動手当は2日分(1日あたり3000円程度)しか支給されません。
交通費や食事代は支給されませんので、ほぼ無給での従事となってしまいます。

大会役員になると

あるのすけ
あるのすけ

わたしは過去に丸2日大会役員として働いたのに2日で2000円しかもらえませんでした……

大会への引率でも十分大変なのですが、役員となるとやるべきことが非常に増えます。
わたしも中体連の専門委員長として大会の運営に携わってきました(正確には強制的にです)。しかも初任者の時にです(ありえない…)
専門委員長とは、体連主宰の大会の運営・会計・役員手配・消耗品の購入・会議等の出席・大会登録の取りまとめなどを行います。つまり、体連主催の大会を企画運営していく役割があります。
役員となると顧問としての引率はもちろんのこと、それに加え役員業務もありますから、平日の勤務時間内にも役員の仕事を行う必要があります。もちろん全て自主的にと捉えられてしまう業務です。

役員を行うと大会から役員費というものがもらえます。
しかし、わたしが担当していた部活の大会では役員費は部活動手当よりも低い場合が多い印象です。
具体的には1日の従事で1500円程度です。交通費も数百円。加えて、部活動手当はもらえません。つまり引率で大会に参加するよりも役員として参加した方が業務量ははるか位に多いのにもかかわらず、役員費は引率者と比較して半分ほどしかもらえません。

今後の部活動のこと

部活動や大会をやりたい教員は意外と多い

専門委員長での大会運営に関する会議に参加した時に感じますが、部活動を行いたいと考えている教員は意外と多いと感じました。コロナ禍で大会の運営をどうしていくかの会議でも 、基本的な方向性は ”どう運営していくか” であり、大会の実施開催の有無について議論はなされませんでした。「なんとかして生徒の活動の場を作ってあげたい」という思いを持っている教員の方が多いということです。

Twitterなどで見ていると部活動に反対である人が多い印象ですが、それは生存バイアスに陥っていることが多いです。大会運営をしている教員の意識はまだまだ「部活動をやりたい」と感じています。大会が開催されればそれに伴って顧問にも業務はやってきますから、なかなか変わっていかないでしょう。

地域に移行は現実的でない

令和5年度から地域への部活動の移行が計画にありますが、真の意味で移行は難しいです。

  • 地域人材の確保
  • 予算の確保
  • 大会の運営や引率等の規定(責任の所在)の変更

これらを考えると、ほぼ無償で従事させることができる教員には敵いません。
各市町村教育委員会単位で本気で取り組む姿勢がなければ、表面上変わったように見せて改革は終わりということが当たり前になりそうです。行政は変化を嫌いますから、現実的に厳しいのは目に見えています。

さらに中体連の開催にあたって、専門委員長会議の中で『学校単位での出場』がほとんどであり、上位大会へ進出しようとすると学校単位でなければならないとの規定があったときもありました。合同チームではこの大会には出場できるが、上位大会への出場はできないなど学校に依存している参加の仕方では、地域へ移行していくことは厳しいのです。

体連が解散しなければ変わらない

大会の運営母体が変革を起こさない限り、その運営に教員が巻き込まれることは必至です。部活動に取り組む生徒が減少していくことでいずれ解散せざるを得ない状況になることは予想できますが、令和5年度までに、文部科学省などが体連を解散させるようなアクションを起こすことはないでしょう。
したがって運営母体が変わっていないことから教員に求められる業務量は変化しないことが予想されます。

最後に

部活動の現状を知り、部活動を取り巻く環境や制度が変わることを待っていては働き方が変わりません。教員として部活動の現状を変えたいのであれば、個人で改革を進めていけることを考え、小さく動いていく必要があります。

ただ、2021年12月2日にスポーツ庁は中体連や競技団体に対して参加資格を見直すように要請する方針を決めました。中体連主催の場合、現在学校単位での出場しかできません。この要請によって、民間クラブでも多くの大会に出場できるようになります。その仕組みによって地域への移行をスムーズにする狙いがあり、2023年度から移行していく方向性があるそうです。

参考資料:讀賣新聞 https://www.yomiuri.co.jp/sports/etc/20211202-OYT1T50167/

この要請に期待し、今自分にできることを取り組んで働きやすい環境を自分で作っていきましょう!!

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では!

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