教員の時間外労働時間が長いのは,随分前から問題提起されています。しかし,なかなか改善されないばかりか,どんどん文科省や各省庁からの通達で学校に課される業務は多くなる一方です。その中でも今回は,〇〇教育というものに対して現状学校に求められているものをピックアップして,どの程度学校が〇〇教育というものが求められているのかということから,学校の働き方に関して考えていきます。
学校にある〇〇教育
職業教育・キャリア教育・ICT教育・情報教育・環境教育・睡眠教育・人権教育・道徳教育・家庭教育・食育・STEM教育(STEAM教育)・性教育・がん教育・薬物乱用防止教育・防煙教育・防災教育・特別支援教育・プログラミング教育・福祉教育・安全教育・NIE教育・博物館教育・学校図書館教育・外国語教育 など
今あげた〇〇教育で 24個 もあります。この〇〇教育に加え,各教科の教育(数学科教育や理科教育など)もあります。また,〇〇活動や〇〇学習など派生したものがとにかくたくさんあります。そして,その全てが学校教育に関連しているようになっており,学校に期待されているということです。
全ての学校が全ての〇〇教育を行っているかと言われれば,当てはまらないものもありますが,多くの学校はこれらの〇〇教育の中の複数個(大半)は担わされている状況であることは間違いありません。
学校が担わなくてもよいはずの〇〇教育
学校は教育の拠点として地域や家庭へ発信していくような側面を持たされていますが,昨今の働き方改革を阻害している大きな要因であり,働き方改革をしようとするのであれば,これらの活動から目を背けることはできません。学校の先生が犠牲となり,地域の人をサポートするというシステムは持続可能ではなく,学校の先生のなり手の現象につながる要因ともなりえます。
例えば ”眠育” というのは学校が担う必要のないことの1つではないでしょうか。もちろん,学校も担い情報を伝えていくことでよりよい教育へとつながるかもしれませんが,絶対に必要かと言われると,必要とは言い切れないことです。そもそも,睡眠に関して学校側が直接関わることはできません。いくら指導をしたところで,見届けはできないわけですから,結局は家庭での指導がどこまで行き届いているかに依存してしまいます。※多くの場合家庭環境依存なことが多いと感じます。
正直,この手の情報に関してはネットで調べればすぐに出てくる内容です。したがって,わざわざ授業の時間を割いて(総合の時間を使用することが多いです)まで,眠育のことを学習したり,まして,眠育の乱れに対する具体的な行動改善を支援する個人面談など必要ありません。根本的に学校に頼りすぎていることに危機感を覚えなければなりません。当然ですが,学校の職員もきちんと理解していないこともありますからね。
なぜ〇〇教育が多いのか
地域・家庭の教育力が減少している
「家庭教育力低下」を,単に現代の家族の変容が生み出すものと解釈するのは適切ではない。「働き方改革」を唱えながらも,ワークライフバランスが実現に至らず,父親の子育て関与が遅々として進まない構造的な問題が,背景として存在することは明らかであろう。父親不在の無職の母親は子育てネットワーク不足から,有職の母親は時間的余裕のなさから,保育者に依存せざるを得ない状況に追い込まれている状況が推察される。
表 真美 ,京都女子大学発達教育学部紀要 2021,第17号. 保育者からみた現代の家族と家庭教育.
上記の論文にもあるように,現に家庭教育の低下は見受けられ,それは核家族化のためだけではなく,社会の構造上の問題も潜んでいるとのことです。原因は様々ですが,教育力が低下していることは間違いなく,そして相対的に学校などの教育機関に頼らざるを得ない状況が生まれていることは確かです。
保護者も頼る人がいないから,なにかと学校に電話してくることありますよね。「それは学校では対応できないですよ…」と言っても理解されないこともしばしば…
時代にあった人材を育成する機会が少ない
具体的には,情報の正しい取得の仕方(メディアリテラシー)を育成する機会がないことです。これは,社会の構造上の問題もあることながら,SNSで発信された個人的な意見があたかも社会全体の思想を代弁しているかのように受け取ったりして,特定の思想以外を拒否するような人が一定数いるからです。
マスクはいらない!意味がない!と言っているような人です。
情報が溢れている現代だからこそ,なにが信用できる情報なのか,どの組織が発信している情報なのかをきちんと吟味することが必要となりますが,その機会が少なく,各保護者が個人的に信用している個人を信じてしまうことが起きているということが問題です。これは,教員にも同じことが言えますが。
学校であればコストゼロで導入できるから
学校というのは内部にいる教員であっても,金銭的な動きがあまり見えませんし,基本的に ”お願い” ベースで様々な事柄が進んでいくものです。したがって,企業に委託するよりも,学校に依頼した方が,ノーコストでそれなりの実績を上げることができるのです。つまり,〇〇教育を推し進めていきたいのであれば,各学校に依頼してくれるように教育委員会に ”お願い” し,管轄の学校へ配信されます。推し進めたい側からすると,極めて単純でリスクの少ない方法ですし,教育委員会側も「うちの市はこんなことも取り組んでます!」というアピールにもなるので Win-Win の関係になっています。その皺寄せが来ているのが ”現場の学校” なのです。
まとめ
学校は〇〇教育が多く求められているという現状があることは事実です。それだけ期待されているということでしょうが,多くの教員の犠牲の上にそれらが成り立っていることを知っておかなくてはなりません。教員の方は,〇〇教育を一概に「やっていこう!」ではなく,学校の実態に合っているのか,学校の教育方針上必須なことなのかをきちんと吟味することが必要です。
上記にも書きましたが,正直『睡眠教育』はいらないですよ。これは家庭での教育内容です。学校がどう指導しろというのでしょうか。家庭まで行くことはしないので,指導を最後まで見届けることはできませんよね。
だから学校の先生は残業が多くなるのです…なにかと準備・事後指導などが増えますから…
あなたの学校取り組まれている〇〇教育を見つめ直してみてはいかがでしょうか?本当に必要かどうかを判断し,適切なビルド&スクラップをしていくことでよりよい教育環境を作っていくことができます。なんでもやれば良いというのは,やめましょう!
では!
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